経済危機に直面しているスリランカのウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国の「破産」を宣言した。
危機的状況は来年も続く見通しで、混乱の長期化は必至。ガソリンなどの燃料が極度に不足しており、AFP通信によると、給油所で自動車に乗って数日間列に並んでいた60歳の男性が車内で死亡しているのが5日見つかった。
急速に物価が上昇しており3月には18.7%のインフレ率を記録し、その結果通常1kgで80ルピー(約32円)のお米が4月には500ルピー(約200円)迄値上がりしています。
これに並行して電力不足になり1日10時間以上も停電が続き医薬品なども入手困難になっております。
こうした生活苦を背景に抗議デモが拡大、4月1日に非常事態宣言を宣言しデモ隊を拘束、SNSを遮断するなど強権的な取り締まりを強めております。
今までの政権はラージャパクサ一族による一族支配により海外からの投資が増え、茶葉(セイロンティー)の輸出といった伝統的産業だけでなく、観光や運輸も活発化した。その結果、世界銀行の統計によると2003〜2012年の平均GDP成長率は6.7%にのぼってます。
しかし資金フローが滞った2010年代後半から、スリランカ経済は行き詰まり始めた。
2019年4月、「イスラーム国(IS)」によるテロがコロンボの高級ホテルで発生し、200人以上の犠牲者が出た。これをきっかけに主力産業である観光にブレーキがかかったため、政府は税率を約30%カットしてます。
これは購買力と景気の回復が目的だったが、それと入れ違いに当然のように税収は低下し、国民生活への支援は難しくなった。
場当たり的な税率カットに関しては、先進国なども懸念を示していた。税収減によって、インフラ建設などの目的でスリランカ政府が借り入れていた海外からのローンの返済が難しくなるからだ。そこに2020年からのコロナ禍と2022年からのウクライナ戦争が追い討ちをかけた。その結果、政府は海外に資金協力を求めたが、これまでのローン返済すら難しくなったスリランカに協力する国が現れないことは不思議でない。
海外資金に頼った危うい統治はスリランカの専売特許ではない。
世界銀行の統治によると、コロナ発生直前の2019年段階でスリランカのGDPに占める海外の借入額の割合は約68.6%だった。
これを上回る国はアジアだけでもモンゴル、ブータン、ラオス、パプアニューギニアの4各国あります。
透明性の低い政権に安易に資金を貸し付けた側にも跳ね返ってくる。その意味で、海の向こうの危機は日本にとっても無関係ではないのです。