新型コロナウイルス禍は、国内の牛肉需要にも大きな変動をもたらしました。
コロナ禍前、牛肉の国内消費の3割は外食が占めていました。しかし、牛肉消費に関連する焼き肉業態の2021年の売り上げは、コロナ禍前の19年比で22.5%も減少しており。外食産業全体での需要減が継続しているとみられております。
家計消費での牛肉購入量は、20年には前年比9.9%増と伸びました。それが21年には反動減(6.2%減)となり、コロナ禍前(17~19年平均)比では1.9%増にとどまりました。豚肉、鶏肉の21年の購入量はコロナ禍前比でそれぞれ6.6%増、9.6%増と高い伸びを示しましたが、牛肉の伸びは鈍化しました。
その背景には輸入牛肉の価格上昇があります。21年に入ると世界的な牛肉需要の回復などで国際相場が上昇。輸入牛肉の小売価格(東京)は21年度、前年度比7.0%上昇となりました。内食での牛肉利用は敬遠され、安価な豚肉、鶏肉の消費が拡大しました。
和牛は、好調な輸出と「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」(20~22年度)の安価販売により需給バランスが保たれてきました。しかし、外食の需要減の長期化や、物価高騰による家計の緊縮がもたらす影響が懸念されております。
前述で外食における焼肉業態の売上は減少していると記述致しましたが外食産業の中ではコロナに唯一対抗できる業態になっております。その要因が以下の2つとなっております。
①焼肉は「目的来店性」が高く、「外食をするなら『焼肉に行こう』」というニーズが高い。
②焼肉は全卓にロースター(換気扇)があり、換気がよいため感染リスクが低い。
①焼肉は「目的来店性」が高く、「外食をするなら『焼肉に行こう』」というニーズが高い。
「目的来店性」とは読んで字のごとく、「この店(業態)に行こう」と思って飲食店に行くことです。
例えば、居酒屋などは繁華街などを歩いていて「看板やメニューなどにひかれてフラっと入る」ことも多いと思います。これを「衝動来店」といいます。一方、焼肉は居酒屋などに比べると、「目的来店性」が高い業態です。
「試合に勝ったら、焼肉に行こう」
「合格祝いに、焼肉に行こう」
「久々の外食、焼肉に行こう」という具合に、
「焼肉に行くことが目的(=目的来店性が高い)」ことが特徴的です。
これを裏付けるデータが、ネットでいかに「焼肉」というキーワードが検索されたか、です。ホットペッパーグルメが月ごとの検索キーワードのランキングを発表しています。そこでも「焼肉」と「居酒屋」の差が浮き彫りになっています。2021年2月のランキングでは「焼肉」は2位(昨年は4位)と昨年よりランキングが上昇しているのに対し、「居酒屋」は17位(昨年は1位)と検索ランキング首位から陥落し低迷しています。
このように、「焼肉」は目的来店性が高く、ネットでも数多く検索されるキーワード(業態)のため、コロナ禍でも集客できています。
②焼肉は全卓にロースター(換気扇)があり、換気がよいため感染リスクが低い。
こちらは、コロナにより「感染リスクが低い店」が選ばれるようになりました。焼肉はもともと基本的にすべてのテーブル・カウンターなどにロースターと呼ばれる換気扇が設置されていました。このため、消費者としても「感染リスクが低い」と判断され焼肉業態の来店へとつながりました。