現在ギョーザの無人販売所が急増しています。郊外のスーパーやコンビニの近くなどで、看板の大きなガラス張りの店舗をよく見掛けるようになりました。しかも、大半の店は、ガチガチに凍ったギョーザが大型冷凍庫に陳列されているだけというシンプルな造りです。
支払いも、神社やお寺に設置されている賽銭(さいせん)箱のような場所に、お金を投入するだけであり。人間の善意に頼るシンプルな仕組みになっております。防犯カメラは付いているが、盗難対策は大丈夫なのかと思ってしまいます。あまり頻繁に人が出入りしているように見えない店舗もあります。
しかし、全国に372店(2022年4月16日現在)を有する「餃子の雪松」をはじめとして、全国にギョーザの無人販売所は雨後の筍の如(ごと)くどんどんできていて、もうかっているような状況です。「餃子の雪松」はコロナ禍に入る前の20年1月には19店だったから、コロナ禍の最中に店舗数で約20倍という急成長を遂げています。
無人販売なので非接触性が高く、新型コロナウイルスの感染を回避したい人々のニーズに見事にハマりました。また、味の素冷凍食品や大阪王将(運営はイートアンドフーズ)の冷凍ギョーザがスーパーで売り上げを伸ばしています。このように、ギョーザが手軽に調理できる簡便さも、巣ごもり需要に合致しました。 ギョーザの無人販売所はどのような経緯で登場し、なぜ流行しているのか。また、パイオニアである「餃子の雪松」の他にどんなプレーヤーがいるのか。実態を後述いたします。
ギョーザの無人販売所は、全国にどれくらいあるのか。 「餃子の雪松」を経営するYES(東京都国分寺市)は昨年6月には約170店の店舗がありました。ところが、1年もしないうちに200店も増えていました。すさまじい勢いです。展開エリアも、昨年6月当時は関東、北は福島県まで、西は大阪府までに店舗があるのみでした。
ところが、現在は北海道を除く、ほぼ全国にまで広がってきました。コロナ禍で閉店する店舗が増えたことで、空き物件も多く出ていたという背景もあるかと思われます。しかも、「餃子の雪松」のビジネスモデルに倣った新規参入業者が次々と出現している。筆者が、主なギョーザの無人販売所の店舗数を数えたところ、おおよその業界地図が見えてきた(公式Webサイトや食べログ、Twitterなどを参照)。
【主な餃子無人販売所の店舗数(カッコ内は運営会社所在地)】
・餃子の雪松(東京都国分寺市)→372
・ふくちぁん餃子(大阪府大東市)→43
・八幡餃子(宇都宮市)→35 ・やさしい餃子(東京都渋谷区)→30
・雪村餃子(茨城県土浦市)→26
・餃子香月(徳島市)→25
・50年餃子(名古屋市)→23
・福耳餃子(福岡県新宮町)→21
・神戸餃子楼(神戸市)→17
・三三餃子(福岡市)→13
・神戸元町餃子(大阪市)→12
・美味工場委員会(水戸市)→11
こうして見ると、「餃子の雪松」が他を圧倒的に引き離して業界トップ。あとは小チェーンが乱立している状態だ。今は小規模でも、1~2年後にはあっという間に業界2~3位に躍り出るチェーンが出現することもあり得る。
後述するが、コロナ禍になってから「餃子の雪松」の成功を見て、どっと参入してきた新しいチェーンの背後には資本力のある事業者が多い(大手・中堅の外食など)。イチから起業してのし上がろうという、生粋のベンチャーが少ないのも特徴だ。
ギョーザの無人販売所が成功するには、“味”がもちろん重要だ。しかし、ギョーザを大量生産する工場設備や、店舗を大量出店する物件開発といったように、イニシャルコストがかかる。そのため、誰でもできそうに見えて、資本力がないと競争に勝つのは難しいと考えられる。 ただし、いったんオープンしてしまうと、店舗を運営していくランニングコストは低く抑えられる。無人で24時間営業できるので、人件費がほとんどかからないからだ。家賃についても、駅前一等地のような高い場所を借りる必要がないので、それほどかからない。
冷凍庫を動かす電気代はかかるが、そこまで目くじらを立てるほどではないだろう。 ギョーザの無人販売所ができると、地域の人がSNSで情報を拡散してくれる。また、話題の業態なので、ローカルな情報誌やテレビ局の取材が入るチャンスも多い。従って、販促費もそれほど要らない(現在、「餃子の雪松」はテレビCMにも注力している)。